6月3日に4カ月ぶりの安値65,707ドルまで急落したビットコイン。その後、本連載でも値動きを追ってきましたが、6月15日時点で**65,524ドル(前日比+1.61%)**まで回復し、節目の65,000ドル台を維持しています。
「これで暴落は終わった?」と思いたくなるところですが、市場はまだ完全に楽観へは傾いていません。今回は、回復の背景にある2つの大きなニュースと、市場の「本音」を示す重要な指標を整理します。
回復の背景①——中東情勢の緊張緩和期待

ここ数週間、ビットコイン相場を最も大きく左右してきたのが中東情勢でした。
6月15日の上昇についても、中東情勢の緊張緩和期待が相場を下支えする要因のひとつとなったと報じられています。これまでイラン関連の報道に振り回される展開が続いていましたが、緊張緩和の兆しが見えるたびに、リスク資産への資金が戻る構図が繰り返されています。
ただし、これまでも「緊張緩和→反発→再び悪化→急落」というパターンが続いてきました。今回も同様の展開になる可能性は十分残っており、楽観しすぎるのは禁物です。
回復の背景②——史上最大のIPO「SpaceX上場」とビットコインの関係

もうひとつの大きな材料が、6月12日に実施されたSpaceXのナスダック上場です。
SpaceXは時価総額1兆7,500億ドル、調達額750億ドル規模という史上最大級のIPOを実施しました。この上場が直接ビットコイン相場と関係していた理由は、SpaceXの財務戦略にあります。
SpaceXはS-1(上場申請書)において、18,712BTC(時価約12億9,000万〜16億3,000万ドル相当)を保有していると開示しました。これはテスラの保有量(11,509BTC)を上回る規模で、「BTCを保有する上場企業ランキング」でも上位に位置する金額です。
上場前に懸念された「資金流出」シナリオ
上場前、市場では懸念の声もありました。数十億ドル規模の資金がビットコインやリスク資産からSPCX株式へ流出するのではないか、という見方です。
特に、すでにテスラに投資している機関投資家——つまりイーロン・マスク氏に間接的にエクスポージャーを持つ投資家——が、ビットコインへの配分を抑えつつSPCX株を積み増す可能性が指摘されていました。ポートフォリオのリバランスが、暗号資産への資金流入の重しになるという見立てです。
結果はどうだったか
ベテランNYSEトレーダーのピーター・タックマン氏は、IPO価格135ドルの7倍近い1,000ドル近辺で初値がつく可能性があると予想していました。実際の初値の詳細はまだ流動的ですが、いずれにせよ「史上最大のIPO」というイベントを通過したこと自体が、市場の不確実性をひとつ取り除いた格好です。
6月15日の上昇には、こうしたSpaceX上場関連の観測も影響したとみられています。イベント通過による「不確実性の解消」が、買い戻しのきっかけになったという見方です。
それでも「恐怖指数23」——市場はまだ怯えている

ここまで好材料を並べましたが、最も注目すべき数字はこれです。
仮想通貨の恐怖・貪欲指数(Fear & Greed Index)は23——依然として「恐怖(Fear)」圏にあります。
この指数は0〜100で表され、0に近いほど「極度の恐怖」、100に近いほど「極度の貪欲(楽観)」を示します。一般的に25以下は「Extreme Fear(極度の恐怖)」とされる水域で、23はその一歩手前という位置づけです。
つまり、価格が反発していても、投資家の心理はまだ底を打ったとは言えない状態ということです。これは「楽観へ傾き切れていない」という分析とも一致します。
テクニカル分析が示す「ブルトラップ」のリスク

価格が反発する中で、警戒すべき見方も出ています。
あるアナリストは、現在の相場が過去の大幅下落前と似た構造を形成していると指摘しています。多くの市場参加者が6万ドル付近を「底」と認識している一方で、今回の反発は弱気相場終盤の「ブルトラップ(だまし上げ)」の最終局面に近い可能性があり、中期的な下落目標として3万8,000〜4万ドル付近を示しています。
「ブルトラップ」とは、いったん価格が反発して「もう底を打った」と多くの投資家が思い込んだところで、再び急落するパターンを指します。もしこのシナリオが当たれば、現在の65,000ドル台からさらに40%前後の下落となる計算です。
一方で、別のアナリストからは、ビットコインのサイクルの底値はまだこれから訪れるとみており、2026年10月に新たな最安値をつける可能性に言及する声もあります。
楽観・悲観どちらの見方も存在する「綱引き状態」というのが、現在の市場の実態です。
マイニング難易度の急低下——供給サイドの変化

価格以外の指標にも注目すべき動きがあります。
ビットコインのマイニング難易度が週末に10.09%低下し、2026年で2番目に大きい下方調整となりました。マイニング難易度は、ビットコインのブロック生成にかかる計算の難しさを示す指標で、通常は技術の進化とともに上昇していくものです。
大幅な低下が起きるのは、採算が悪化したマイナー(採掘業者)が大量に撤退したことを意味します。今回の暴落でビットコイン価格が下落したことで、電力コストに対して採算が合わなくなったマイナーが事業を縮小・停止した結果と考えられます。
これは短期的な価格への直接的な影響は限定的ですが、「暴落が実体経済(マイニング業界)にも影響を及ぼしている」ことを示す重要なサインです。
今後の注目ポイント——7月に向けて

これまでの記事でもお伝えしてきた通り、今後の相場を左右する要因は変わっていません。
① 73,869ドルを回復できるか 3日足終値でこの水準(0.236フィボナッチ水準)を回復できれば、弱気シナリオを払拭する鍵となります。現在の65,000ドル台からは、まだ距離があります。
② Clarity法案の審議(7月初旬) 仮想通貨規制を明確化する法案の進展は、機関投資家の参入を左右する重要な材料です。
③ FRB新議長の議会証言(7月) 金融政策の方向性が、リスク資産全体への資金フローを決定づけます。
④ 中東情勢の最終的な行方 緊張緩和が一時的なものか、本格的な収束に向かうのかが、ビットコインのボラティリティを左右し続けます。
まとめ——「回復」と「警戒」が同時進行する市場

6月15日のビットコインは65,524ドルまで回復し、SpaceX上場という大型イベントも通過しました。表面的には「悪材料の消化が進んだ」とも言えます。
しかし、恐怖指数23という数字、そしてアナリストの間で割れる「ブルトラップ vs 本格反発」という見方の対立は、市場がまだ不安定な状態にあることを示しています。
「回復したから安心」と思うのも早計、「まだ下がる」と決めつけるのも早計。こういう時こそ、感情ではなく数字を見ながら、自分のポジションを冷静に管理することが大切です。
引き続き、7月のイベントに向けた動きを追っていきます。
免責事項: 本記事は2026年6月15日時点の情報をもとに執筆しています。価格情報・予測はあくまで参考情報であり、投資の推奨ではありません。投資はご自身の判断と責任のもとで行ってください。


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