「また暴落だ」——6月25日、そのニュースが飛び込んできました。
ビットコインは6月25日から26日にかけて、**21ヶ月ぶりの安値となる58,115ドル(約970万円)**にまで沈みました。年初来安値を更新しただけでなく、2024年後半以来となる水準への急落です。
本連載では6月3日の暴落→6月15日の小幅回復→と相場を追ってきましたが、今回はさらに深い底へ。何が引き金を引いたのか、そして今後どこへ向かうのか。最新データをもとに整理します。
6月25日、何が起きたか——数字で確認

まず今回の急落の規模を数字で把握しておきましょう。
- 安値:58,115ドル(約9,390万円)——21ヶ月ぶりの安値
- 史上最高値(2025年10月)からの下落率:約54%
- 24時間の強制清算額:1億2,600万ドル超(レバレッジロングポジション)
- 下落の影響範囲:イーサリアム・XRP・ソラナ・ドージコインなど主要アルトコイン全面安
- 市場心理(恐怖・貪欲指数):「極度の恐怖」圏に突入
6月3日の65,000ドル台から見ても、わずか3週間でさらに10%超の下落となりました。「底を固めながら反発へ」という期待が裏切られた格好です。
今回の急落——「売りが増えた」のではなく「買い手が消えた」

今回の下落の本質を理解するために、重要な視点をお伝えします。
CryptoQuantのオンチェーンデータ分析によると、今回の急落の主因は「売り圧力の増加」ではなく、**「現物需要の減少」と「AI関連株への資金シフト」**にある可能性が高いとされています。
2024年から2025年にかけての上昇相場を支えた最大の要因は、米国現物ビットコインETFへの資金流入でした。ETFは毎日のようにBTCを吸収し、市場から供給を取り除いていました。しかし2026年に入ると状況は大きく変化し、ETFからの資金流出が続き、Coinbase Premium(米国機関投資家の需要を示す指標)も長期間マイナス圏に沈んでいます。
つまり今の市場は「誰かが売り浴びせている」のではなく、「買う人がいなくなった」状態——これが今回の急落の本質です。
引き金①——AI・半導体株の急落とリスクオフの連鎖

6月25日の急落の直接的な引き金は、米国AI・半導体関連株の急落でした。
AI株急落のニュースを受けてリスク回避姿勢が強まり、値動きの大きいリスク資産から資金が流出。ビットコインを含む仮想通貨市場は全面安の展開となりました。
2025年に「AIブーム」として盛り上がってきた相場に陰りが見え始めており、AIへの期待後退がテック株全体を押し下げ、その波及効果が仮想通貨市場にも及んでいます。
「ビットコインはAI株と関係ない」と思われがちですが、現実には機関投資家がポートフォリオをリスク管理する際、値動きの激しい資産として仮想通貨とAI株を同時に売る動きが起きやすい構造になっています。
引き金②——FRBのタカ派姿勢とPCEインフレ加速

もうひとつの大きな材料が、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策への警戒感です。
6月17日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、ケビン・ウォルシュFRB議長はタカ派姿勢を示しました。金利見通しの分布図では、18人の参加者のうち9人が年内に現行レンジを上回る金利を予想し、2026年末の中央値も3.8%へ引き上げられています。
そして6月25日にはPCE(個人消費支出)物価指数が予想を上回る前年比4.1%に加速したと公表されました。4月の3.8%からさらに上昇しており、インフレ圧力の根強さが鮮明に。これを受けて早期利下げ観測が完全に後退し、高金利環境の長期化を嫌ったリスクオフの売りがビットコインを直撃しました。
「金利が高い=リスク資産には逆風」という構図は今後も続く可能性が高く、FRBの次の一手が市場を左右する最大の変数となっています。
引き金③——クラリティー法案の成立難航

さらに追い打ちをかけたのが、米国の仮想通貨規制明確化法案「クラリティー法(Clarity Act)」の成立難航です。
本連載でも何度かお伝えしてきたように、クラリティー法は仮想通貨をめぐる規制の不透明感を一気に解消し、機関投資家の本格参入を促す「切り札」として期待されてきました。7月初旬の本格審議が見込まれていましたが、議会内での合意形成が難航しているとの報道が相次ぎ、市場の失望売りを誘いました。
また6月25日、24日に米下院がCBDC(中央銀行デジタル通貨)発行禁止法案を可決したことは、分散型暗号資産の支持者には好材料となりましたが、全体の地合い悪化を打ち消すには至りませんでした。
引き金④——オプション満期とレバレッジ清算の連鎖

テクニカルな要因も今回の急落を増幅させました。
6月25日にはDeribitにてビットコイン・イーサリアムオプション10億6,300万ドル分の満期が重なりました。大規模なオプション満期は価格の急変動を引き起こしやすいことで知られており、今回も例外ではありませんでした。
さらに価格下落に伴ってレバレッジロングポジションの強制清算が連鎖し、24時間で1億2,600万ドル超が一気に清算される展開に。価格下落→ロスカット→さらなる下落という「清算の連鎖」が58,000ドル台への急落を加速させました。
現在の状況——58,000ドル台での攻防

急落後、ビットコインは58,000ドル台に一定の買い支えが入り、いったん反発しています。テクニカルアナリストは「58,000ドル台は単なる心理的節目であるだけでなく、構造的なテクニカルサポートとしても機能している」と指摘しています。
また市場心理を示す恐怖指数とRSIがそれぞれ「極度の恐怖」と「売られすぎ」の領域にまで低下しており、過去のパターンから見ると「全員が弱気になった時が底に近い」というサインでもあります。
ただしハッシュレートの低下基調も続いており、マイニング業界への影響が価格の重しとなる構図は変わっていません。
今後の見通し——反発か、さらなる下落か

下値シナリオ
PCEが4.1%という高い数字を記録したことで、追加利上げ観測が浮上するリスクがあります。もし7月のFOMCで利上げが示唆された場合、ビットコインは50,000ドル(約800万円)台への下落も視野に入ります。アナリストのベンジャミン・コーウェン氏は「2026年10月に新たな最安値をつける可能性がある」との見方を以前から示しています。
反発シナリオ
現在の水準は多くのマイナーの採算分岐点に近いとされており、これ以上の下落は難しいという見方もあります。7月のClarity法案審議で前向きな進展があれば、機関投資家の買い戻しのきっかけになる可能性があります。また過去のパターンでは、「全員が弱気になった時に市場は底打ちしやすい」というアノマリーも存在します。
投資家へ——この局面での心構え

今回の急落は本連載で繰り返し指摘してきた「構造的な買い手不在」が現実になった形です。
ただし、歴史を振り返ればビットコインは何度も50〜80%の下落を経験し、そのたびに最高値を更新してきました。今が「底」なのか「まだ途中」なのかは、今の時点では誰にもわかりません。
大切なのは「今が安いから全力で買う」でも「もう終わりだから全部売る」でもなく、自分が許容できるリスクの範囲内で、冷静に行動することです。急落時こそ、感情ではなくルールで動く投資家が最終的に生き残ります。
次の大きな分岐点は、7月のClarity法案審議とFOMCの結果です。引き続き動向を追っていきます。
免責事項: 本記事は2026年6月28日時点の情報をもとに執筆しています。価格情報・予測はあくまで参考情報であり、投資の推奨ではありません。投資はご自身の判断と責任のもとで行ってください。


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